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防災・復興・観光とARの融合が生み出す新しいアプリの形

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2017.02.28ARインタビュー

ARの多くはゲームやエンターテインメント、教育分野で利用されていますが、人々の生活を災害から守る 「防災」においてもARが活用されています。今回の開発者インタビューは、各自治体、行政機関へARを使った防災アプリを数多く開発しているハーバー・ソリューションズ株式会社の久賀 公夫さまです。

「災害大国ニッポン」では、まさに必需といえる 「防災アプリ」。その中でARが果たす役割とは? 早速お話を聞いてまいりましょう。

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―― 「防災アプリ」を作ろうとしたきっかけを教えていただけますか?

元々、総務省事業や、デジハリ (デジタルハリウッド)でアプリプログラミングなどを教える仕事をしていたのですが、1995年に発生した「阪神淡路大震災1.17」における研究に携わっておられた先生と知り合いました。先生から当時の災害について色々と勉強させていただき、私もアプリを通して防災に貢献したいと考えるようになったのがきっかけです。

「人命の大切さ」、「後世への伝承」、「社会貢献」の重要性を改めて感じるようになり、「リスク・コミュニケーション」という考え方をベースに、スマートフォンを活用した「安心・安全」を提供する「防災アプリ開発」に取り組んでいます。

―― 「リスク・コミュニケーション」とはどういう考え方なのでしょう?

地震、揺れ、津波、氾濫、浸水、土砂、液状化、火山、活断層などの各ハザード情報は地域特性におけるリスクとして、行政から配布されるハザードマップなどで現在地の情報を知ることができます。この情報をもとに、現在いる場所が発災時には「どれくらいの災害リスクがあるのか?」、「発災時には、どのような行動を起こしたら良いのか?」といったことを日頃から考える必要があります。これが 「リスク・コミュニケーション」の考え方です。

この「 リスク・コミュニケーションの周知」に対し、「アプリによるG空間可視化」を広く活用し、情報配信したいと考えます。 「G空間(総務省さま提言)」とは、位置情報を利用し、空間上に他の情報を重ね合わせて表示することで「空間への可視化」を実現するものです。(「G」はGeo Technologyの頭文字。位置情報×空間を意味します。)

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―― 実際に開発した防災アプリを紹介してもらえますか?

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東京都港区さまの「港区防災アプリ」があります。このアプリではリスク・コミュニケーションの観点から、区内における津波ハザート値を「ARを活用した3Dイメージによる浸水深表示」という機能で提供しています。

災害時にはアプリのMAPに区民避難所やハザード情報を表示したり、港区からの防災情報をプッシュ通知したりします。そのほか防災教育、防災に役立つ各情報を知ることができます。

震災が起こってしまった地域では、「あの日を忘れない・・震災伝承アプリ」も提供しています。公益社団法人 みらいサポート石巻さまの 「石巻津波伝承アプリ」では、特定地点において、震災前、震災直後、現在、未来を画像で比較できるようになっています。当時、到達した津波の浸水実績をARで確認することもできます。また、「岩沼市震災伝承・防災アプリ」では、「千里の丘公園」の津波伝承展望施設からスマートフォンを空間にかざすと、360度の視野で「震源地」や当時被害を受けた「仙台空港」などの地物をAR(エアタグ)で見ることができます。(下図参照)

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さらに最近では、観光情報も含めた「シティアプリ」と呼んでいる形態のアプリも提供しています。これは平時には「観光促進アプリ」として活用し、自然災害、アクシデント、テロなど緊急事態が発生した際には必要に応じた情報を配信するというものです。シティアプリの例としては、現在開発中の「種子島西之表市情報配信アプリ(仮称)」があります。種子島に関する移住情報、観光情報などを配信しますが、住民、観光客、ロケットの打ち上げ見学に訪れた方達への発災時の防災情報も配信します

―― 防災におけるスマートフォン、ARの効果を教えてください。

スマートフォンを通じて、常に防災における最新情報を提供することが重要です。まず、街のインフラは毎年のように変化していきます。また、あまり知られていませんが避難所も災害の種類に応じても分かれているので、災害時はどの避難所が開いているのかといった情報が刻々と変化します。そのうえ、災害によって道路が遮断されると、避難所に到達できなくなります。行政の危機管理部門では、そうした情報をリアルタイムに配信し、「パトロールアプリ(偏在、開発中)」などにより、よりリアルタイムな安全避難を指示する必要があります。

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ARの場合、ビジュアル性をアプリで提示することによりマップ解読の煩わしさや、言葉での説明が不要という点が挙げられます。ユニバーサル仕様への考慮をしなくてはなりません。それに、最近は外国人観光客がとても増えています。外国人に日本語のテキストで説明するのは難しいですがARで視覚化すれば理解できます。避難所がどこにあるかといった情報も単に地図上にマッピングするだけでなく、スマートフォンのGPSを使って、現実の風景の上に表示すれば、避難所などの目的地までの距離と方角がすぐにわかります。実際に、防災の日にあるテレビ番組で港区在住の外国人に「港区防災アプリ」を使って、避難所に誘導できるかどうか試していただきましたが、無事に避難できました。

―― 防災アプリにはWikitudeも使われているそうですが、Wikitudeを選んだきかっけは?

元々ARについては別のSDKを使っていましたが、サービスが中止となり、ネットでAR開発用のSDKやツールなどを検索して見つけたのがWikitudeでした。SDKを提供しているグレープシティさまが東日本大震災の被災地の宮城県にあると、そのとき知りました。開発においては、AR機能の呼び出し部分はiOSとAndroidで同じコードを使えるので同時開発も楽ですね。現在はiOS/Android SDKを使っています。

―― Wikitudeを使ってみていかがでしたか?

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今はWikitudeの標準で用意されているUIを使っている段階ですが、エアタグ(POI)の外観や、位置レーダーといったUIのデザイン、選択した地物の詳細情報などの表示機能に関し、カスタマイズしていきたいと思っています。やはり 「見やすさ」や「使いやすさ」にはこだわりたいと思います。

それから、防災アプリやシティアプリの特性上、どうしてもロケーションベースのARを作ることが多いのですが、マーカーレス型画像認識ARアプリも開発中です。それぞれにおいて、アプリ利用者の活用シーンに合った機能を実装提供していきたいと思います。

―― 今後、ハーバー・ソリューションズさまとしてはどのような展開を考えていますか?

今後は 「レジリエンス」をテーマにして、現在取り組んでいる「防災アプリ」や「シティアプリ」を拡張していこうと考えています。

レジリエンスは 「復元力」を意味する言葉です。「ナショナル・レジリエンス」、「グリーン・レジリエンス」など国土強靭化、地方創生、自然環境保護などに活用していきたいと考えます。 自然環境資源を維持し、造出しつつ、平時は人々にとって観光や憩いの場ともなり、発災時においては、人々の命を守る…このように「安心安全、地域活性、自然が効果的に融合するまちづくり」に貢献できる「シティアプリ」を目指していきたいです。

2018年には準天頂衛星 みちびき」の稼働により、GPS誤差は10センチ以内になると言われています。G空間によるエアタグ、ジオフェンシングといった可視化機能連携が一層、進化していきます。

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また、2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、多言語AIに注目しています。AIを使った音声入力に対して、現在地における「安心・安全等各情報」をガイドするような仕組みです。これらの最新ICT技術推進、情報連携により、「強くてしなやかなニッポン」、「レジリエンス・JAPAN」へと貢献できればと考えています。

まとめ

エンターテインメントの印象が強いARですが 「防災」というある意味で究極の実用アプリで大きな力を発揮できることがわかりました。久賀さまは日本各地の自治体や研究機関とのパートナーシップの中で、「新しい形での防災アプリ」を手掛けておられました。

この記事をご覧になった方はぜひお住まいの地域の防災アプリを探してみてください。もし、そこにグレープシティのWikitudeが使われていれば、とても光栄です。また、記事には書ききれませんでしたが、取材では興味深いお話をたくさん伺うことができました。

久賀さま、本日はどうもありがとうございました。


ハーバーソリューションズ株式会社 様

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会社名

ハーバー・ソリューションズ株式会社
Harbor Solutions Inc.

所在地

〒107-0052
東京都港区赤坂7-3-37 プラース・カナダ1F 

設立

2013年7月8日

事業内容

ICT各技術を活用したスマートフォンによる「減災、防災向けアプリ」及び「その他アプリケーション」における企画、設計、制作、販売、保守

お問合わせ先

TEL:03-6894-7611
FAX:03-6894-7701

Webサイト

http://www.h-sol.com/